株式会社加須不動産
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2017年11月18日
賃貸管理の舞台裏

貸家に関する過失失火の賠償責任と契約解除

借主が火災を起こし、貸していた部屋の一部と隣室の一部を焼いてしまいました。借主の寝タバコが原因で発生したとのことで、この場合、貸主は借主に対し、損害賠償請求をすることができるでしょうか。

失火責任法による責任範囲

民法709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。ゆえに、損害を与えた借主は、隣室の住人に対して損害賠償責任(民法709条)を負う可能性があります。
しかし、火災の場合には、失火責任法が適用されます。失火責任法は、火災を起こした者に「故意又は重大な過失」がなければ損害賠償責任を負わないとしています。
「故意」とは、わざと行うこと。また、「重大な過失」とは、「通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかな注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」をいいます(最高裁/昭和32年7月9日判決)。
このように、失火責任法は、火災を起こした者の責任の範囲を限定しています。
このような限定をしているのは、火災の場合は被害が思わぬ範囲に拡大してしまう可能性があるので、火災を起こした者にすべての損害を賠償させるのはあまりに酷だから、と言われています。
今回のケースでは、借主は、不注意でタバコの火を消し忘れて眠ってしまったために火災が発生したということですから、この場合には借主に「重大な過失」があるといえ、借主は、隣室の住人に対して損害賠償責任を負担しなければなりません。

貸主に対する損害賠償

貸室の一部に被害が及んでしまったことについて、借主は、貸主に対して損害賠償責任を負担する必要があるのでしょうか。借主は、「善良なる管理者としての注意義務」をもって貸室を保管し、返還する義務を負担しています(民法400条)。「善良なる管理者としての注意」とは取引において一般的に要求される程度の義務という意味です。借主が不注意で火災を起こしてしまった場合、借主は、この義務に違反したことになりますから、債務不履行に基づく損害賠償責任(民法415条)を負う可能性があります。
火災を起こした場合には、失火責任法が適用されると説明しましたが、失火責任法は、あくまでも火事という「不法行為」に基づく損害賠償責任に対して適用される法律です。
借主の貸主に対する責任は、これとは別の「債務不履行」に基づく損害賠償責任ですから、失火責任法は適用されません(最高裁/昭和30年3月25日判決)。
故に、この場合の借主は、「故意又は重大な過失」の有無にかかわらず、貸主に対して損害賠償責任を負うことになります。債務不履行に基づく損害賠償責任は、「債務者の責めに帰すべき事由」(民法415条)、つまり、借主側に非がある事情に対して負う責任です。火災を起こした借主側に、もしこのような事情があれば、貸主に対して損害賠償責任を負うことになります。
今回は、借主が不注意でタバコの火を消し忘れて眠ってしまったということですから十分に非があるといえます。借主は、貸主に対して損害賠償責任を負担しなければならない、と主張できるでしょう。
この記事を書いた人
鈴木 光浩 スズキ ミツヒロ
鈴木 光浩
埼玉県加須市で24年間不動産に関わる事業、取引を続けてきました。 最近は公益社団法人の理事職も兼任しています。還暦も過ぎたので 頑張らず、我慢せず、根性持たずのゆるゆるペースが仕事の基本ですが、 不動産売買の本質、賃貸不動産経営の本質的な問題について理解した上で 各種コンサルティングを日々行なっています。自分自身で収益物件の購入・ 売却、賃貸経営を実践しています。失敗も成功も経験ありますので案件に 適した提案が出来ると思います。趣味は心身の健康書籍の読書と将棋観戦。 世の中で起きていることを見ること、聴くことが好きで、好奇心に満ち、 ときたま書くことや写真を撮ることに夢中になります。
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